「ラジオクエスト」第1章 第1話
ある少年が【歴史の授業】を聞きながらつまらなそうに独り言を呟く。
「剣と魔法によって生きている……か、今じゃ子供でも知っているよ、そんなこと」

 この少年の名はケイジ。
最近、先生の推薦で普通特選科から 召喚士特選科に入った少年である。
他人の見解を言えば、今一何を考えているのか判らないし、 決断力にも少し欠けている部分があるようだ。長所と言えば身軽な事か。
 
「まあまあ授業なんだから仕方ないよ」

つまらない質問にも丁寧に応じたこの少年の名前は霞流(かすが) 。Bクラス天候研究科に所属している少年である。(ちなみにクラスはケイジと一緒だ)
彼の特徴は天候や地理に関して右に出るものはいないとされるほどの秀才である。

さて、ここでこの学園(しもつふさ村兵養学園)のシステムを説明しておこう。ここの学校は普段は普通授業制だ。
だが特別授業のときは、それぞれの科に別れる。つまりケイジの場合、普段はBクラスだが、特別授業の時は召喚士特選科に別れると言った具合だ。
「とりあえず次は特別授業か……それにしてもいざ召喚士特選科に入ったら面倒だな〜・・・ま、楽って言えば楽なんだけどね♪ 」
霞流がここであきれた顔をしながらこの言葉に対して突っ込みを入れる。
「ケイジ……。言っていることが微妙に矛盾してるよ。まぁ、とりあえず俺は行くよ、じゃ!また後で!!」と霞流は小走りで行ってしまった。
それに続くようにケイジも行こうとした時にある人物を思い出し、その人物に声をかける。

「早く行こうぜ!確か特別授業のときのクラスは隣だから・・・一緒に行こうよ!」
 ケイジが声をかけた人物の名前は砂嵐(スナアラシ) 。所属はBクラス魔術特選科に所属している。彼の特徴はとにかく魔法が大好きなことだ。
この学校に入れたのも魔法に対する執着心が彼を入学させたと言っても過言ではない(本来なら他の学力も無いと入れない)。魔法の方の腕も 魔法が好きと言うだけあって確かな実力を持っている。ただ彼の短所は、魔法以外に興味関心が無いことだ(完全に無いと言うわけではないが・・・。)
「うん、判った。ちょっと待って、今準備してるから……。」
すると砂嵐は自分のロッカーから奇妙な物と、よく砂嵐が持っている「とても重そうな辞書」(何が書いてあるかには興味無い)を取り出した。

「お待たせ、さ!行こうぜ!!」
その言葉にケイジも条件反射として頷くが、ケイジの目線と興味の先は、先ほど砂嵐が取り出した。奇妙な物の方に行ってしまった。
そしてケイジが奇妙な物について砂嵐に質問してみると、
「これ?これは魔法に使う媒体薬。媒体薬って言うのは魔法を使うときのマナ(自然界に溜まっているエネルギー。 術者の意思によって形を変える。)が可動しやすくするための物。これを使うことによって……。」
 
砂嵐の魔法に関する話はいつも長くなるのだ。しかも一般人には到底理解できないような単語が出で来るので、ケイジは一層暇になる。
「・・・自然界に溜まっていたエネルギーが何らかの原因によって固体化したり液体化してたりする。 例えばここに風の結晶と言う石があるが、この石は、風が石になったと言う訳ではなくて自然界に広がるエネルギーが固体化した物なんだよ。 そしてこれを風の結晶と呼んでいるのは風の魔法を使ったときの魔力の稼動形式がこの石の中でも働いていてこの石に魔力を注ぎ込むと風の魔法が……。」
 途中まで真剣に聞いているケイジだが、話が進むにつれ砂嵐の話が難しくなっていくので、 無意識の内に砂嵐の話が耳に入らなくなってしまう。

暇を持て余して、見慣れている学校の廊下や、窓の外の空に目をそらす。窓から心地よい風が流れてきた……。 すると砂嵐は、この展開を読んでいたかのようなタイミングで話をまとめあげ、出来るだけ判りやすくケイジに説明する。

「つまり媒体薬って言うのは魔法を発動しやすくしたり効果を倍にしたりするってこと、それにいちいちルーン語を唱える必要も無いしね」
ここでケイジは感銘深く頷く(しかし、どうにも理解していないと言うか、どうやらケイジは、理解しようとも思ってないらしい……。) 

 こんな話をしている内に特別クラスの部屋に着く。砂嵐とは、ここでお別れだ。(隣のクラスだから)
砂嵐に軽く別れの挨拶をしてから召喚士特選科のクラスに入り席についた。しばらくすると授業開始のチャイムが鳴り響いた……。


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