「ラジオクエスト」第1章 第2話「過去の出来事」
 召喚士特選科のクラスは他の特別クラスに比べて学ぶべき事が多い。だから他のクラスに比べて面倒だ。だが、それなりに充実はしている……。気がする……。

召喚士特選科の学ぶ内容は、召喚獣の飼育の仕方、召喚獣との契約など、大きく分けるとこれだけだ(だと思う……)。
それから細かい内容をいろいろと勉強したり実践したりと、やることはまだまだある。だが今日の授業内容は実践勉強は無いらしい。
さっきの歴史の授業ですでに眠気が溜まっていたケイジは、自分でも知らないうちに夢の世界へと入っていってしまった……。


 ケイジは昔、海に行ったころの夢を見ていた。海岸には、沢山の人が来ている。
ここの海は波が穏やかで特に目立った危険(モンスターなど)が無いため、 家族で来る事が多い。だが、少年ケイジが海の中で遊んでいたその時、急に大きな波が襲ってきた。少年ケイジは、為すすべなく波に飲まれていった……。

 すると少年ケイジの体に長くて大きい何かが絡み付いてきた。そしてその何かは、海面に浮上して行こうとする……。
 少年ケイジは、海面へと浮上していく途中で何かを見た。それは ハッキリとは認識は出来ないが、とにかく何かを見たのだ。そして少年ケイジは、また意識を手放した・・・。


 「ケイ……おき……はやく……ケイジ」

ケイジはまだハッキリしない意識の中で、懐かしい……とまではいかない、息せき切った砂嵐 の声と、それに続いて霞流の声も聞こえてきた。
「おい!ケイジ早く起きろ!モンスターが襲撃しに来たんだよ!早く起きろ!!」
だがケイジは寝ぼけた眼差しで霞流に向かって意味不明な言葉を語る。

「海に何かが隠されている。そして待っている何かが……。」

 ここで痺れを切らした霞流が砂嵐にアイコンタクトを取る。すると砂嵐も頷き背中に背負っていたスタッフを手に持ち目を閉じながら精神を集中し呪文を唱え始めた。
「イング・エオー・イス この者に意識覚醒の加護を与えたまえ・・・ミレキュア!」
呪文が唱え終わると砂嵐のスタッフから光が放たれケイジの全身を包んだ。
 すると朦朧としていた意識は素早く覚醒され、ケイジは、完全に目を覚ました。と同時に、間の抜けたことを言い出す。
「ふぁ〜おはよう。あれどうしたの?二人ともそんな怖い顔して」
 霞流は面倒な顔をし、砂嵐は複雑な顔をしながらケイジを睨んだ。そして再び霞流が順を追って説明を始める。
 「いいか?よく聞けよ、モンスターが襲撃しに来た。でも今回はモンスターの数が多くて 自衛団だけじゃあ足りないから、この学校三年生も来てくれって自衛団の人が来た。 それで俺達以外のチームは全員出動したのに俺達だけ遅刻したってこと。」
「勿論ケイジの居眠りのせいで!」
と、霞流が最後の部分を強調して説明する。するとケイジも少し顔が赤くなった。だがここで砂嵐が微笑しながら小さめの声で、しかし皆に聞こえる声で告白する。
「実は、俺達も居眠りしていたのは、秘密だけどな」
 思わずケイジが吹き出す。それに続くように霞流と砂嵐も笑い始める。 だが霞流が何かを思い出したように声を張り上げた。
「おい!笑っている場合じゃねえ!早く行かないと先生にこっぴどく叱られることになるぞ!とにかく……早く行くぞ!!」

「おう!!」

するとケイジと砂嵐が同時に声を張り上げる。そしてケイジ、霞流、砂嵐の三人は、ほぼ同時に教室の ドア潜り抜けた。いつも通っている廊下をモンスターとの戦いに対する不安を抱きながら三人は走り抜ける……。


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