「ラジオクエスト」第2章 第1話「モンスターとの戦い」


モンスターが村を襲うことは珍しくない。なぜならば、モンスターは村の食料を狙ってくるからだ。その為に村に自衛団が組織されている。今回学生にも応援要請が来ているが、それは自衛団が弱いのではなく、モンスターの数が多いからだ。首都の方では自衛団が100人近く入るというが、しもつふさ村の規模では30人がやっとの所だろう。
 そこでこの村では戦闘技能を教科としている学園に応援要請を出す。するとざっと90〜120人近く集まり、その「特設自衛団」でモンスター(モンスターが1回に襲ってくる数は100〜150である)を迎え撃つという仕組みになっている。

「は〜やっと着いた。たく〜三人皆居眠りしていたから遅くなっちゃったよ」

と霞流が疲れた声で愚痴をもらす。

「まあ仕方ないよ、そんな事より早く行こう!」

と、ケイジが霞流を急がせる。霞流は膨れっ面をしながら早めに歩き始めた。 その後をケイジと砂嵐が付いて行く。
 モンスターを迎え撃つのはいつも村の門を出て300m程歩いたところにある森が開けたところで向かえ撃つ、のだが、 200m程歩いたところで大きな爆発音が聞こえてきた。
 これに砂嵐が素早く反応、分析を開始する。

「炎系魔術のセカンドクラス級呪文フィラルの呪文だ。多分、厄介な敵が現れたんだな、急ごう!軽く胸騒ぎがする!」

言って砂嵐は走り出す。それに続いてケイジと霞流も走り出した。
 
 現場に着くと想像を絶する様な光景が広がっていた。いつもの様に 「人間の方が優勢」と言う戦況は無く、傷ついた死体やモンスター相手に 苦戦を強いられている自衛団員が目に入った。
 それもその筈。いつも中型、 小型のモンスターしか居ないのに、今日は大型モンスターが(既に倒されているのを含めて)5匹は存在している。
砂嵐は、スタッフといくつかの媒体薬を手に取り精神集中を始めた。
媒体薬を自分の周りに振りまいてから、スタッフで気持ち体を支えるような感じで目を閉じながら詠唱を始める。 魔術師特選科では、いつでも最高な状態で魔法を使うため、常に平然でいられるようにする訓練があるそうだ。

「ウィン・ラド・ニイド・ダエグ 精霊よ、我が呼びかけに答えよ……。」
 
 ケイジと霞流は、呪文を詠唱し、完全無防備状態の砂嵐の援護に回るため武器を構える。
流石にモンスターが三人の気配に気づいたようだ。犬の形をしているが目は炎が燃え盛っているように赤く、前足と後ろ足に炎を纏っている中型モンスター・ヘルハウンドが向かって来ている。これを確認すると、ケイジは召術を唱えながら素早く前に出る。

*(召術は召喚獣の力を借りて出すため、魔術の様に精神を集中することなく出せる。その代わりに魔術より技の威力は欠ける)

「水よ、我が剣にその涼霊たる力を授け賜え!」
すると、ケイジの持っている剣が薄い青色をした光に包まれる。 そして向かってきたヘルハウンドの首筋目掛けて振り下ろした。
ヘルハウンドは後ろに一回転ジャンプをしてこれを避けるが、 ケイジはこれを読んでいたかのように次は下から上に空を切った。
すると剣を包んでいた光が剣の切っ先を辿って着地した直後のヘルハウンドに 向かって飛んでいき、見事直撃。ヘルハウンドは、鎌鼬(かまいたち)のような 大きな傷を負って息絶えた。ケイジが大きな声で叫ぶ。

「見たか!名づけて水の波動!!なんてね」

 それを聞いた霞流が微笑む。彼は、まだ別のヘルハウンドと戦っていたが、かなり余裕を見せていた。
 豪を煮やしたのか、不意をつく形でヘルハウンドが霞流に向かって前足を振り上げ、炎を纏った鋭い爪で切り裂こうとしてくる。霞流は、目では笑わずに口だけで微笑むと、軽いサイドステップで相手の攻撃を避け、さらに背中に負われている銃剣を構えるのと同時にヘルハウンドに向けて連続で銃弾を放つ。
弾丸は再び霞流に攻撃をしようと構えていたヘルハウンドに全弾命中して、その黒い魔物はその場に倒れて動かなくなった。

 霞流とケイジがほぼ同時に砂嵐の方を見た。

「……されど我らに聖なる光の加護をそして敵に光の天罰を!! 来い!光の精霊ジュリアス!!」

ちょうど長い呪文の詠唱が終ったようだ。その場の空気と光が一箇所に集まり形を成していく。

その形は、人によく似ていた。人と違うのは背中に大きな翼が生えていることだ。
魔導師にジュリアスと呼ばれた光の精霊は、胸の前で手を組み始める。すると戦っていた人たちの傷がみるみるうちにふさがっていく。傷の回復を見届けると、ジュリアスは微笑みながら虚空に消えていった……。

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